何から何まで急な出来事ばかりで、シュウヤの頭は混乱していた。ここはどこだ?さっきまでの路地裏は?答えが出ないまま同じような疑問が頭の中で回り続けながらも、ようやく周りに目をやると、いつの間にか自分のように困惑している様子の人でごった返していた。右も左も良く見れば、自分と同じくらいの年の人間が集められている。
シュウヤ「こ、これって……」
状況が飲み込めず、余計に頭がパンクしそうになる。その間にも、どんどんと周りの人間が増えていっているような気がする。僅かに話し声も聞こえてきた。
フクタ「ひぃ!?なに?ここどこ!?どうなってるの!?」
ザキ「フハハハハッ!人だ!人がこんなにたくさん!!」
タダシ「ふむ、興味深い現象ですね。光に包まれたと思ったらここに?なんらかの移動系の能力……でしょうか?」
人によって様々な反応が聞こえてくるが、しばらく見ているうちにシュウヤはある事に気がついた。何人かの影に、悪霊のような歪な影が重なって見える事に。
シュウヤ「つまりここにいる奴らは、全員……オレと同じ能力を……」
シュウヤはその事実に目を輝かせる。今まで自分だけにしか見えなかったものを、共有している人間たちがいるという事実に。しかしそんな楽観的な反応は、次の一瞬で掻き消された。
ザキ「こんだけ人がいるなら……切り放題ってことじゃねえか!!“VOODOO KINGDOM “!!」
「ぎゃあああああああああああ!?」
「お、お前!?何すんだ!?」
シュウヤのすぐ横から悲鳴が聞こえた。人が多く、細かいところまでは分からなかったが、その瞬間確かにシュウヤは人と人の間から、吹き出した鮮血を見た!
シュウヤ「な、なんだ!?何が起こった!?」
シュウヤは混乱しながらも咄嗟に理解した。自分自身は今までこの能力を隠し、なるべく使わずに生きてきた。しかしやろうと思えば、この能力は、人を殺せてしまうのだ!ここにいる全員、その気になれば人を殺せる力を持っている!事実今、能力を人殺しに使っているイカれ野郎と出会ってしまっている。そんな奴がこの中にあと何人いるか、わかったもんじゃない。
シュウヤ「あのクソ帽子、とんでもないとこに飛ばしやがって!」
今はとりあえずここを離れなければ!誰もがそう思ったその時、地面が揺れ出した。
シュウヤ「ん?……誰か建物の方から来る!」
ばらけかけていた人々の群れ目掛け、また新たに飛び込んで来る集団が現れた。物凄い勢いでこちらに向かってくる。
シュウヤ「な!?」
それは、見るも異質な集団であった。人間とは思えない姿も混じっている。宙に浮く者、羽が生えている者、体が燃えている者、獣のような者。まさに魑魅魍魎。そこに集まっていた人間全員の動きを一瞬止めるほどの圧を放っていた。
「「新入生だああああああああああ!!ひゃはああああああああああああああ!!!」」
シュウヤ「な、なんだんだこいつらあああああああ!?」
「全員まとめて!!殺せ!!」
「させるな!!新入生を保護しろ!!」
「生捕りにしろ。一人も逃すな」
こうして、地獄は完成した。先ほどまで周りにいた人間が次々に死んでいく。抵抗虚しく何者かに捕まった者の悲鳴も聞こえてくる。どこかで誰かと誰かが殺し合っている。そしてシュウヤもまた……
アミゴル「ピンチョ・モルーノ(串焼き)になるのだから」
剣に腹を貫かれ、死の危機に瀕していた。鮮烈な痛みが全身を包んでいく。しかし、それ以上にシュウヤは……
シュウヤ「ムカつくなぁ」
アミゴル「ん?……抜けな……」
シュウヤは腹に刺さった刃を掴んで離さない。
シュウヤ「こんな、わけもわかんねえまま死ねるかよ!!ようやくこのクソみたいな人生にッ!!”答え“が見つかるかもしれねえんだ!!」
今までに味わった事のない生死が交わる極限状態の中で、シュウヤの眠っていた、いや自らが縛っていた”能力“が目を覚ます。
アミゴル「こ、こいつ……!」
その瞬間、確かにアミゴルには、シュウヤにもう一つの影が重なって見えた。彼の後ろに、傷だらけで鬼のような形相をした悪霊を見た。
シュウヤ「この傷!そっくりそのままてめえの顔に返してやるぜええええええ!!」
アミゴル「まずい!」
咄嗟にアミゴルは、自らの悪霊を消して回避するも、その顔に切り傷がかすかについてしまった。
アミゴル「危ないとこだったよ。まさかそこまで”ネクスト“を扱えるとは。だが、その傷。もう動けないだろアミーゴ!」
図星だった。シュウヤは膝から崩れ落ち、傷口を抑えるのがやっとだった。
シュウヤ「クソ……死ぬのか……ここで?」
アミゴル「しかし、妙ですねぇ。君の”ネクスト“。私に触れたのは確かに拳だった。しかし、私の頬は切り裂かれている。まるで私の攻撃のように」
うずくまるシュウヤの前で、アミゴルは構える。
アミゴル「まあ、ウン・パリーケ(無駄話)もこのくらいにしておきましょう。さあ、アミーゴ!今度こそピンチョ・モ……」
セイジ「”200m吹っ飛んで圧死しろ“」
アミゴル「え」
シュウヤが瞬きする間に、アミゴルの後ろに現れた男は、神々しい宝石に包まれた分身でアミゴルを殴り飛ばす。
アミゴル「びゃあああああああああ!?」
アミゴルは200mほど飛んでいき、
アミゴル「びゃ?……グベラチャ……!?!?」
申し合わせたように、急に空中で停止すると潰れて平たくなった。
シュウヤ「な……なにが……」
急に現れたその男は、優しくシュウヤに駆け寄る。
セイジ「もう大丈夫だ新入生!ここは危険だ。着いてきて!」
シュウヤ「は……はひ……?」
セイジ「新入生?新入生いいいいいいいい!?」
思わず返事をしてしまったシュウヤだったが、怪我からか、安心からか、そのまま視界は暗くなっていった。